戸惑いの姫君と貴公子は、オフィスがお好き?―特別編―



それがまた扇情的に移るのは、自然な色香と美しさゆえだろう。


「さきほどの写真のひとつで、俺が着ていたスーツから推理しました。
――ラベンダー色のネクタイは、2人からの初めての誕生日プレゼントですからね」

「お、覚えてたの?」

「当然ですよ」と、目を見開いた彼女に破顔する。


高級ブランド・ショップを苦手とする怜葉。プレゼントするのはいつも俺の方だ。


その彼女がわざわざアルマーニまで赴いた。そして星矢の目の前にネクタイを掲げると、彼が触れた品物をプレゼントしてくれたのだ。


俺のために選んでくれた大切なプレゼントを忘れるわけがありませんよ……?


ストライプ模様の入った淡い紫色のネクタイは、物に執着心のない俺が大切に扱う宝物となっている。



「その日は懇親会の前に所用があったのですが、こちら側の断りを無視してその場に同行した取引先の令嬢がいましてね」

「はぁ」

「怜葉さんを傷つけたものを徹底的に排除します」

笑顔を浮かべる裏で、すでに様々なシナリオを浮かべているとは口にしないが。それが気に入らなかったのか、涙を拭ってから俺を睨んできた。



「で、でも騙されないんだからね!?
エッチしたんでしょ!?ほら、あの写真!浮気相手と写った!」