傍にいさせて






「桐山ぁ、ヘタな動き見せんなよ」


「っ、」




汰斗さんは拳を握りしめ、苦虫を噛み潰したような顔をした。




「……お前、顔見せろ」


「!や、め…、やめてください!」




男の人が顔を見ようと私の顎をつかみ、上を向かせようとした。



私はそれに、頭を左右に大きくふって、手を振り払おうとした。


それに気分を害したのか、男の人は意地になって、私を上に向かせようとする。



また私は、それを必死に振り払う。



そんなやりとりをしていたら、ふいに体を拘束する力が無くなった。



チラッと下を見ると、男の人が苦悶の表情を浮かべて、地に伏している。



目線を上げると、見知った顔があった。