「夏恋ちゃんじゃないかい!」
「あ、平田のおばさん!こんにちは〜」
「はい、こんにちは
あぁそうだ、夏恋ちゃん、これ持って行きな!」
お肉屋さんの平田さんに声をかけられ、挨拶をすると、これ、と言って、私に紙袋を渡してくれた。
じんわりと手があったかくなるのが分かった。
「これは?」
「娘が作ったコロッケ、まだまだ未熟だから店に出すわけにもいかないからね」
「でも、こんなにたくさん……」
「いいんだよ!それに、もうすぐ引っ越すんだろ?餞別みたいなもんさ、夏音ちゃんと食べな!」
そう言って、私の頭を撫でてくれた。
ちなみに、夏音(かのん)とは、私のお母さんの名前。
ここの商店街の人達とは、みんな知り合い。


