紗彩を抱き直しながら、乗り込み
「あの…港中中央総合病院まで…お願いします…」
ゆっくりと頭を下げながら、告げると
「はい、港中中央総合病院ね、承知致しました。」
と、やわらかく答えてくれた。
病院までは、車なら多分40分位だっただろうか、この時間ならもう少し早く到着できそうだと、運転手は思い
「30分かからない位じゃぁいかと思いますので…」
と、なんだか、言葉はゆっくりだったが様子が急いでいるような彩乃に伝えた。
彩乃は、伏せていた目を少しだけ運転手に向けると、また力なく頷き、再び目を伏せた。
彩乃は流れる景色を見ることなく先程の警察からの電話を思い返していた。

