支払いを済ませ、紗彩を抱きかかえたまま夜間入口に走り込む。
照明はうっすらとしか付けられておらず、その暗さが、彩乃の心をさらに苦しめた。
カッ!カッ!カカッ!!!カカッ!!!!
静かな廊下をローヒールのパンプスで駆けていく。
突き当たりにカウンターが見えて、1人だけ看護師らしき女性が立ったまま何かしていた。
「あっ!!あのっ!!すみません!!小林幸太、小林幸太はどこでしょうか?!!!」
「はい?小林幸太さん、ですか?いつ、こちらに来られた何科にかかられてる方ですか?今は時間外で、お見舞いで…」
「違います!!!!」
こちらの焦る気持ちとはうらはらに、看護師は、いたって落ち着いていて、しかも、見当違いの事を言ってくる。

