「…だから…こんなことを思う私は薄情で嫌な女です…仕事や紗彩に、関係のない話をしたり、滝沢さんが構ってくださってることに、幸せを感じたり喜んでいる…酷い人間なんです…」



言いにくいであろう、胸のうちを隠さずに伝えてくれる純粋さにまた惹かれながら、俺も、この思いを伝えなければと強く思った。



「それでも…そんな酷い女ですけど…心には、小林幸太という夫、娘の父親が今でも大切に居ます…この想いは何があっても消えることはありません…」



そう話し、彩乃は胸元の指輪のかかったネックレスをさわっていた、きっと、夫に貰ったものなのだろう。



「今までお会いしたときにお話しするようなことではなかったですが、もっと早くに私の事情をお伝えしていたら、今日のように、私と会いたいなんて滝沢さんが思うこともなかったと思うと、申し訳なくて、本当にすみませんでした。」



深く、頭を下げる彩乃をみて、本当に心の綺麗な人なんだなと改めて感じた。