そう。
今日は私の誕生日であり、私が初めて海の外に出て人間の世界に行ける日なのだ。
だけど、それはひと時だけ・・・砂が落ちるまでだそうだ。
自由に人間の世界に行くには、私はまだ未熟なんだってぇ・・・。
しかし、ひと時だけだとしても嬉しかった。人間の世界のことは姉様たちから聞いていて、ずぅっと憧れていた。
想像のできない世界に、
焦がれて、焦がれて
たまらなかった。
そんな世界を私は今日、自分で見て感じられるのだ。
「わかりました。母様」
旅立つときだ。
想像のできない、もう一つの世界へ―――。
「気をつけて行ってらっしゃい。人間の世界は危険がたくさんあるのよ・・。
私たちは城で待っていますね。帰ってきたら、パーティの席でたくさんのみやげ話を聞かせてちょうだい。初めて見たもののこととか、感動したこととかね!
・・・・それから・・、不安なことがあったら、笑顔よ」
母様は左右の口角を左右の人差し指で、くいっと上げてみせた。
その様子が面白くて、笑ってしまった。
「ぶっ。か・・母・・・・様っっ!!!顔、ひっっっどぃっ!!」
「そうそう、いい笑顔。・・・さあ、いってらっしゃい」
「プリンセス、お気をつけて!」
気が付くと、たくさんのマーメイドやマーマンが見送りに集まってくれていた。
うん。
いってくるよ、みんな。
「いってきますっ!!」
私は全員に届くように大きな声で告げた。
そして、上に向かって泳いだ。

