白と黒の神話

「わかってるわよ、思いっきりやってやろうじゃない。そのかわり、ウィアには援護を頼むからね」

「それは当然でしょう。こっちだって、死にたくないですからね。とにかく、用心することです」


 ウィアのその言葉が合図になったかのように、霧は徐々にその姿を消している。

 そして、中から姿をあらわしたものをみた時、一同は声をなくしているのだった。


「あれは……デュラハン?」


 セシリアの絶望的な声が響いている。それも当然のことだろう。彼らの前にあらわれたのは、馬にまたがった騎士のすがた。ただ、その胴体についているはずの頭は腕に抱えられている。

 アンデッドの中でも上級と認識されるそれは、見るものに恐怖しか与えない。そのデュラハンが率いるのはスケルトンと呼ばれる骸骨の兵士と屍体に仮初の命を宿らせたグール。ここにこのようなアンデッドの一団があらわれた理由は謎である。しかし、このままでは殺されるだけというのも明白な事実。