「そうだね。ここで時間つぶすのも勿体ないし」

「よろしいですよ。ここで拗ねている人は気にしないでくださいね」


 自分の隣りでふくれた顔をしているカルロスを横目でみながら、ウィアはそう言っている。


「子供より質の悪い人ですからね。気にせず、出発しましょう」


 その言葉にセシリアたちは移動を始めている。村自体は小さいこともあって、すぐに抜けられるのだが、空にかすかに雲が広がるのを見たセシリアは眉をひそめているようだった。


「雨になるのかしら」

「そのようですね。急ぎましょうか」


 最初のうちこそ、そんな軽口もたたく余裕もあったろう。しかし、道を進んでいくうちに、そんなところは姿を消している。そうやって、一時間くらい馬を進めた時である。四人の前には、今にも崩れそうな砦が姿をあらわしていた。しかし、どうみても人がいるようにはみえない。