白と黒の神話

「そのままですよ。待ち合わせ場所も決めていないのでしょう」

「その心配ならいらない。お前の名前で宿はとってあるし、連絡してあるから」

「は? 私の名前? 人の名前を勝手に使ったというわけですか」


 いかにもうんざりといった表情のウィア。こうなったら、下手にでるしなかいと思ったのだろう。相手はひたすら低姿勢をくずそうとしていない。


「お前に相談しなかったのは悪かったよ。反省しているから勘弁してくれ」


 その言葉にも素っ気ない顔をしているウィア。彼はあくまでも冷ややかな表情をくずそうとはしていない。


「そうですか。そう思っていらっしゃるのでしたら、少しは学習してください。王子の不始末の尻拭いはゴメンですからね」

「う……」


 ウィアのその声に相手は一瞬、言葉につまっていた。彼に王子と呼ばれていたのはカルロス。つまり、セシリアをルディアに呼び出した当人でもあるのだった。