白と黒の神話

 王女の話相手というからには、高位の貴族に連なるはず。それにも関わらずここまでの旅を嫌がらなかったセシリアの様子。それは大したものだと素直に賞賛する声がその口からもれている。


「あら、私の噂はきいているんでしょう。初めて会った時、知っているみたいだったし」

「たしかにね。でも、じゃじゃ馬っていってもお嬢さんだからね。ここまでタフだとは思わなかっただけ」


 そう言って立ち上がったミスティリーナだが、急に何かを思い出したのだろう。セシリアの顔をジッとみている。


「それはそうと、大事なことを忘れていたじゃない!」

「リーナ、どうかしたの?」


 急に大声を出したミスティリーナの顔をセシリアはビックリしたようにみている。


「何か忘れていることあった?」

「そうよ、大事なこと! ルディアで会うっていうけど大丈夫なの? 相手は王子様なんでしょう。話を立ち聞きされないようにしなきゃ」