白と黒の神話

「僕がアルディスに隠れているように言ったのは間違いないさ」

「どうして、そんなことを?」


 そうたずねるセシリアだが、大体の理由はわかっている。そして、それを考えると苛々するのだろう。どこか棘のある口調で、彼女は話の続きを促していた。


「アルディス自身も不安だったみたいなんだ」

「この結婚が政略結婚だって思ったから? かもね。女の子ならそれが当たり前かな?」


 お姫様とはいっても普通の女の子なんだ。そう思ったミスティリーナはポツンとそう呟いている。彼女のその声に、アルフリートは力を得たように頷いている。


「そう。だから、アルディスに言ったんだよ。父上が本当にお前の幸せのことを考えているなら、お前が姿を消せば必死で捜すだろうし、ちゃんと気持ちもきいてくれるだろうって」

「その口車にアルディス様はのってしまわれたわけですね」