白と黒の神話

「そそのかしたって人聞きの悪いことを言うんじゃない」


 セシリアの言葉が的を射ていたことを証明する声。そして、苦虫をつぶしたようなアルフリートの顔。それを見たセシリアは、自分の考えが的外れでないと確信したのだろう。アルフリートを追及する声に、ますます力が加わっていく。


「やっぱりでしたのね。でしたら、説明してください。アルディス様はどちらに行かれたのですか?」

「なんだって! アルディスは隠し部屋にいないのかい?」


 セシリアの言葉にアルフリートは真っ青になっていた。彼は慌てて隠し部屋に入っている。しかし、そこに誰もいないという事実に、彼は呆然とするしかできなかった。


「う、うそだろう……」

「アルフリート様、説明していただけますか?」


 予測もしていなかったことを目にして何も考えることができなくなっているアルフリート。そんな彼に追い討ちをかけるようなセシリアの声。この事態になって、さしもの彼も自分の知っていることは白状するしかないと観念したようだった。