白と黒の神話

「ここのことは誰もが知ってるわけじゃないわよ。私だって、隠し通路は知っていたけど隠し部屋までとは思わなかったわ」

「そっか。それもそうよね。誰もが知ってたら、役に立たないもんね」

「そうよ。だから、ここを使おうなんて考えるのは、あのバカぐらいよ」

「誰がバカだって」


 話しているうちに、二人は隠し通路から出ているようだった。そして、その二人を出迎えたのがどことなく不機嫌そうな若い男の声。もっとも、セシリアはそんなことを気にしていないようだった。その声の主に彼女も不機嫌さを隠そうとはしていない。


「バカをバカと言うのがいけませんか?」

「で、そのバカは誰だって?」

「十分に心当たりはあられますでしょう。でも、お目にかかれてよかったです。アルフリート様におたずねしたいことがありましたから」