「カルロス様に何も言わなくてよかった」


 セシリアは思い出したようにポツリと呟いているのだった。


「あたしはそうは思わないんだけど? あんたはスッキリしないでしょう?」

「でも、そうしていたらアルディス様を悩ませていたわ。それくらいなら、今の方がよかったのよ」


 そういうセシリアの言葉にミスティリーナはため息をついている。その顔に浮かんでいるのは、わからない、というような表情。そんな彼女にセシリアは笑っているのだった。


「リーナ。そうやって、私のことを心配してくれるあなたが好きよ。でも、いつまでも落ち込んでいられないのよね」

「そうなの?」


 セシリアの様子が変わったことにミスティリーナは首をかしげていた。その彼女の目は部屋中にある花束に釘付けになっているともいえるのだった。


「リア、これは?」

「アルディス様の婚約が決まった途端なのよね。本当になんて言ったらいいか」