白と黒の神話

 互いに打つ心臓の音も、寸分のずれもない。まるで一つのものであるかのように、同調しながら脈打っている。そんな中、一つの光景が浮かんでいた。

 暖かなひざしが差し込んでいる場所。銀髪の青年がかたわらにいる少女を優しげな顔でみつめている。それにこたえるように、同じ優しい表情で寄り添っている少女。


「お兄様……」


 アルディスの手を握っているジェリータが呟いている。それは、かつての穏やかな日の記憶なのだろう。だが、それが一変している。

 思い詰めたような表情のジェリータ。それを懸命に止めようとしているシュルツ。そして、お互いに言い争う兄妹の声が聞こえていた。


「お兄様、わかってください。このままでは、わたくしたちが暮らす場所がなくなりますわ」

「だからといって、創世神に逆らうことは許されない」

「わかっています! でも、誰かがやらないといけないことですわ」

「やめるんだ、ジェリータ。今なら、まだ間に合う!」