白と黒の神話

「わたくしの手をとって。あなたが本当に知らなければいけないことがあるわ」


 そう言いながら、差し出される白い手。それをとるのを拒むかのように首を振っているジェリータ。しかし、アルディスはあきらめようとはしていない。相変わらず、聖母のような慈愛の表情を浮かべながら、ジェリータに近寄っていく。


「来ないでよ。わたくしは、ちゃんと知っているわ。今さら、あなたに教えてもらう必要なんかないわ!」

「どうして? この手をとるだけでいいのよ? そんな簡単なこともしたくないの?」


 首をかしげるようにして、たずねているアルディス。その様子は無邪気としかいえないものだった。しかし、セシリアにはアルディスがそんな行動をとる意味がわからない。そして、ジェリータもアルディスの行動の真意がわからないために不安を覚えている。だがそうではあっても、おずおずとした感じでジェリータはゆっくりとその手をのばしていた。


「本当なの?」