白と黒の神話

 そう言った邪霊王は、まっすぐにジェリータの顔をみている。その顔に浮かんでいるのは、とろけるような甘い表情。少女であれば、それに抵抗などできるはずがない。


「マスター……」


 どことなく、ウットリとした様子でいるジェリータ。そんな彼女にアルディスが近寄っていた。


「あなたは、可哀想な人だわ」


 同じ顔、同じ声がその場に響いている。


「どうして、そんな言葉だけを信じようとするの? どうして、現実をみようとしないの? あなたのことを心配してくれているのは誰なの? それさえ、わからなくなっているの?」


 恐れた感じもみせずに、ジェリータに近寄るアルディス。そんな彼女にイヤイヤをするように首を振っているジェリータ。


「あなたの言っていることはわからない。わたくしのことを心配してくれているのはマスターよ」