白と黒の神話

「マレーネ、お前の言うとおりにはならないよ。消滅するのはジェリータの方だ」

「信じられませんわ。人間よりもわたくしたちの方が優れております。聖王女を支配できないはずがありませんわ」


 シュルツの言葉が信じられないマレーネの反論。しかし、シュルツはそんなことは意にも介していないようだった。


「どちらが優れているかじゃない。ジェリータが不自然な形でいすぎただけだ」


 千年という時間を肉体と魂がわけられた状態で生きてきたジェリータ。それが不自然なことであるのは間違いがない。そして、魂こそ転生を繰り返しているが、それをしていない肉体が限界まできているのを誰よりも知っているのがシュルツだったのだ。


「そのあたりで高みの見物でもしているんだろう。お前のやったことを見届けるつもりはないのか」


 そう言い切ったシュルツは何もない空間の一点を指差している。それはセシリアたちにしてみれば意味のないことだが、マレーネにはそうではなかったのだろう。彼女の顔色はみるみる青ざめ、自信に満ちた表情が曇っている。そんな彼女の変化をシュルツは見逃してはいなかった。