白と黒の神話

「どこまで逃げられますかしら? 下がることしかできませんの」


 嘲笑うかのようなマレーネの声。そして、それに呼応するようにデュラハンも勝ち誇ったような声をあげている。


「あまり簡単なのは嫌いですがね。しかし、あなた方には煮え湯を飲まされたのです。遠慮はしませんよ」


 セシリアたちには逃げ場がないようだった。すっかり追い詰められ背中は壁にピッタリとついている。


「心配する必要はありません。盟主様が再生なされれば、あなた方も同じようになるのですから」


 そう言うなり満足げな顔で舌なめずりをしているデュラハン。しかし、そこにあらわれた影が冷酷ともいえる響きをその声に宿しているのだった。


「勝手は許さないよ、ハインツ。これはジェリータの望みじゃない」

「シュルツ様!」

「お前はジェリータのためと思っているんだろうね。でも、そうじゃない。お前のやっていることはジェリータを苦しめるだけだ」