白と黒の神話

『まったく、どいつもこいつも人を敬うという言葉を知らんのか!』


 神竜のその声を聞くものはいない。それは、風にのって流されていくだけだった。



◇◆◇◆◇



「ここ……どこ……」


 荒れ狂う風が襲ってきたのは覚えている。しかし、この場所はシンと静まり返った空間である。一体、どうしたのだろうかという思いでセシリアはあたりをキョロキョロみているのだった。

 彼女のすぐ横にはミスティリーナが倒れている。そして、少し離れたところにはカルロスとウィアの姿もある。だが、その場にいるべきもう一人の姿がみあたらないことに、セシリアはいいようのない不安に襲われているのだった。


「アルディス様! いらっしゃらないのですか?」