「私も入るのは初めてなの。ここって、外に繋がる通路だってきいたことあるわ」


 そう言いながら階段を下りていくセシリア。どこかに空気取りのための穴があいているのだろう。彼女の持つ燭台の火がゆらゆらと揺れている。ミスティリーナはどこか緊張した様子で口をぎゅっと結んでいる。ちょっと不安定ともいえる足場を確かめるように歩いている二人。やがて、これといった収穫もないままに隠し通路の出口にまで到着してしまっていた。


「ここから外に出られるんだ」


 そう言って振り向いたミスティリーナの目には城の塔が映っている。ということは、ここは城内ではないということだろう。そのことを彼女はセシリアに確かめていた。


「ええ、ここは城内じゃないわ。でも、何もなかったわね」


 何か手掛かりがあるのではと期待していたセシリアの口調が力のないものになっている。そんな彼女を慰めるようにミスティリーナは明るい声を出していた。


「今度は反対側からみてみれば? 一度じゃわからないものよ」