白と黒の神話

 シュルツの言葉に神竜は何を言うのだといわんばかりの顔をしている。そんな神竜を無視するようにシュルツは言葉を続けている。


「あの子には時間がない。予言が成就する時は近いんだ。そして、その時に消えるのはジェリータ。いや、そうならなければならないんだ。そうならなければ、あの子は人形のまま」


 悔しそうな色がその声に宿っている。彼にはこれしか妹を救う方法がないことに空しさも感じていたのだろう。


『それでお主は心配しているわけじゃな。じゃが、元々のジェリータじゃったら問題はないじゃろう。儂が覚えておるジェリータは聖王女と同じじゃ』

「カロンがそう言うなら大丈夫だろうね。それなら、僕も頑張ってみよう。結局、これしかあの子の救いはないわけだからね」


 そう言うなり、シュルツはその姿を消している。シュルツにもおいていかれた格好になった神竜は悪態をつくしかないようだった。