白と黒の神話

 シュルツの言葉は信じられないものである。しかし、それを聞いていた神竜が否定しないということが、それは真実だということでもある。そんな中、シュルツは語り続けていた。


「聖戦も終わり、落ち着きを取り戻した頃だ。あいつが動いた。あいつは封印されていたジェリータの肉体を奪い、仮初の意識を与えた。今のあの子は単なる操り人形。それでも、あいつのそばにいる限りどうすることもできない」


 シュルツの声には悔しさが滲んでいるようだった。それは自分の妹を好き勝手にされているということもあるからだろう。そして、セシリアは彼の話の中にでてきた『あいつ』というのが気になっていた。


「いろいろとたずねるけど、『あいつ』って誰なの?」


 セシリアの言葉にフッと顔を曇らせているシュルツ。しかし、最後まで話さなければいけないのはわかっているのだろう。彼は覚悟を決めたように口を開いている。