白と黒の神話

 シュルツに気色ばんで詰め寄るカルロス。そんな彼をウィアは必死で押さえている。


「言ったことは嘘じゃないよ」


 シュルツの言葉は穏やかであるが力を感じさせる。その言葉に逆らえる者はいないともいえるのだった。


「千年前の聖戦。それがすべての始まりだった。あの時に我々が望んだのは、ほんのささやかなこと。『人間に邪魔されない場所が欲しい』それだけだった」

『じゃが、それは不可能じゃったな。人がその望みをきくことはありえぬことじゃった』


 神竜の言葉にシュルツはかすかにうなずいている。


「だから、ジェリータは動いた。あの子は、仲間が狩られることが耐えられなかったんだよ」


 広間に響く淡々とした声。その語られる内容は軽いものではないが、彼の語り口のために昔話のように聞こえる。


「あの子は我々だけで暮らせる土地が欲しかった。しかし、人間。特に聖教皇を中心とした勢力は、それさえも許さなかった」