ジェリータが姿を消した広間。そこは、まさしく嵐が過ぎ去った後だった。あちらこちらに破壊の爪痕が残っている。そんな中、シュルツは何事もなかったような顔をして立っていた。


「シュルツだったわね。助けてもらったことになるわけだから、お礼は言っておくわ」


 ジェリータの引き起こした突風から自分たちを守ったのはシュルツの力。それがわかっているセシリアは複雑な顔をしているのだった。


「別に君たちを助けようとしたわけじゃない。でも、ありがたくいただいておくよ」


 軽く肩をすくめながらの言葉には、人を小馬鹿にしたようなところがある。そして、その彼の視線はセシリアたちの後ろにいる神竜に向けられていた。


「カロン、久しぶりだね」

『千年ぶりじゃぞ。久しぶりはないじゃろう。しかし、お主が生きていたとはな』

「僕たちの寿命を忘れたのかい。それに、人のことは言えないだろう」

『たしかにそうじゃな』