白と黒の神話

 ミスティリーナはポツリとそう言っている。肖像画からは美少女という言葉しか出てこない。これならば他人にとられるのを嫌がる気持ちもわからないではない。ミスティリーナは変なところでアルフリートの気持ちがわかったのだった。


「これは、先日の誕生祝に絵師が描いたものよ。見てるのもいいけど、遅くなるわ。奥に行きましょう」


 そう言うとセシリアは奥へと向かっている。その彼女に遅れまいとしているミスティリーナとウィア。しかし、カルロスはその場から動くことができないようだった。魅入られたようにアルディスの肖像画をみつめている。


「王子、おいていきますよ」


 呆れたようなウィアの声も聞こえていないのだろう。そんな彼の様子にウィアは肩をすくめている。


「そこまで本気なら、それを示さないといけませんよ」

「ウィア、何が言いたい」