その場から去ろうとするセシリアたちを引き止めようとするアルフリートの声。それに苦々しげなウィルヘルムの声がかぶさっている。そして、それを耳にしたアルフリートは、まず父王に言いたいことを言おうと決めたようだった。


「父上、以前から申しておりますが、あのような政略結婚がアルディスのためになるとは思えません」


 相変わらず、自分なりの論理を繰り広げているアルフリート。彼は自分の思っていることを主張するのに懸命になっていた。


「あいつがアルディスを本気で思っているとは考えられません。今は大人しくしていたみたいですが、それも芝居でしょう」

「どうして、そういう風に決めつける」


 アルフリートの言葉にうんざりしたような表情のウィルヘルム。しかし、アルフリートはそれに気がついていない。もっとも、それはある意味で幸せといえることなのだろう。


「とにかく、私は反対です。本人が来たとしても認めるつもりはないです」