白と黒の神話

「聖水晶とはある種の結界だと思ってください。しかし、これは最悪の形でもあります」

「結界? でも、アルディス様はそんなことはできないわ」


 セシリアの声にミスティリーナはうなずいている。そして二人だけでなく、カルロスもおかしな顔でウィアの顔をみている。それぞれのそんな反応をみながら、ウィアは言葉を続けていた。


「アルディス姫は聖王女と呼ばれていましたよね。それは姫君がある種の力を持っていることを意味しています。たしか、大神殿からも迎え入れたいという申し入れがあったはずです。それは、姫君のその能力のせいでもあります」

「つまり、お姫様は自分では気がついていないだけで、聖教皇と同じような力があるってわけ?」


 アルディスは結界をはることができない。それは彼女が王女であって魔導師ではないからだ。いかに魔法を使える素質があっても、訓練もせずにできるものではない。そして、ミスティリーナのそんな言葉を肯定するような素振りをウィアはみせている。