白と黒の神話

「リア。そろそろ宿に戻ろうって」


　ミスティリーナのその言葉に、セシリアはハッとしたような顔をしている。


「そ、そうね。いつまでも、ここにはいられないわね。心配かけて、ごめんなさい」

「気にしないでいいから。やっぱり、あんたにはショックだったろうしさ」


　ミスティリーナのその言葉にセシリアはうなずくだけ。


「とにかく戻りましょうか。あまり遅くなると何があるかわからないし……」

「そう。その方がいいって。相談しなきゃいけないこともあるだろうし、宿に戻ろうよ。ウィアも言ってるけど、ここにはあまり長居したくないのよね」


　ミスティリーナのその言葉には説得力がある。セシリア自身も、アンデッドと一戦を交えた場所に長居をすることが危険なことは承知している。彼女がシュルツの言葉にショックを受けていなければ、もっと早くにそうできていたのだ。もっとも、そのことにミスティリーナがふれないのが、彼女なりの気遣いだとセシリアはわかっている。それに報いるには、一刻も早く移動したほうがいいのだ。