白と黒の神話

「強がりはいいけど、僕がこなかったら間違いなく死んでいたんだよ。命の恩人に対する言葉とは思えないね」

「たしかにそうでしょう。しかし、我々にはあなたという人がわかりませんから」


 シュルツの表情に張り合うようなウィアの冷えきった声。それに対して何か言いたげな様子のデュラハン。しかし、シュルツがそれを押さえつけている。


「ハインツ、これ以上の醜態をさらす前に戻れ。もっとも、ジェリータがどう言うかはわからないけどね」


 そう言いながら浮かべているのは微笑であるはずなのに、どこか背筋の寒くなるものも感じられる。しかし、シュルツの言葉にデュラハンが逆らえるはずがなかった。彼は最後にセシリアたちをねめつけるとその場から姿を消している。それを止めることはセシリアたちにできるはずがない。


「邪魔者はいなくなったね。少しは詳しい話ができるかな?」