白と黒の神話

「ずいぶんと元気なお嬢さんだ。さっきまで肩で息をしていたのにね」

「黙りなさい。きいているのはこっちよ!」


 ミスティリーナのその声に反応したハインツを視線だけで止めている青年。


「ハインツ、大人しくしておおき。まだ、消滅したくはないだろう?」

「……」


 彼の言葉に黙りこくったデュラハン。この青年はセシリアたちを助けるつもりか、そうではないのか。彼の態度をみているとどちらともとれる。

 彼が姿をあらわした時の様子。デュラハンの態度の豹変。それらは彼がセシリアたちの味方ではないことの証明だろう。しかし、それだけではないような印象もないことはない。


「もう一度きくわ。あなたは何者なの?」


 セシリアの声に相手はちょっと肩をすくめている。そして、仕方がないというように口を開いていた。