白と黒の神話

「ハインツ、そんなに慌てなくてもいいだろう。それとも、言いつけを守らなかったことを後悔しているのかい?」


 その声は姿に相応しい涼やかなもの。しかし、それがまた恐怖を誘うとでもいわんばかりの表情を浮かべているデュラハン。


「あなた様がこちらにおみえになるとは思ってもおりませんでしたので……」

「そうだね。来るつもりなんてなかったんだよ。でも、あれは止めなきゃいけないだろう」

「し、しかし……」


 青年の言葉に反論しているデュラハン。そんなデュラハンを青年は冷ややかな顔でみている。


「こいつらは殺すなと言われていたんだろう」


 そう言って、彼はセシリアたちの方をみている。


「あんたって何者よ!」


 ミスティリーナの叫び声が響いている。彼が出てこなければ、自分たちの命はなかっただろう。だが、そうだからといって彼が味方であるとは到底思えない。