白と黒の神話

 詠唱が終わると同時に姿をみせる炎の槍。その狙いをデュラハンにつけた彼女はためらうこと無く攻撃に転じている。

 地面を揺るがすような轟音。巻き上がる白煙。それらはミスティリーナの魔法が威力を発揮したといえるもの。いかに上級とはいえ、アンデッドであるからには炎は最大の弱点といえる。この一撃がデュラハンに与えるダメージはかなりのものであるはずだった。


「……どうなの……」


 自分の魔法の力は信用している。しかし、結果をみるまでは油断できない。そう思っているミスティリーナの声には、期待と不安が混じりあっていた。やがて、煙は消え視界が再び戻ってきている。


「う、うそ……」


 自分たちの前に広がる光景を目にしたセシリアはそう呟くしかできない。たしかに、目の前にアンデッドはほとんどいない。しかし、圧倒的な存在感を与えるものがいる。


「人間もバカにしたものではありませんね。そちらのお嬢さんの力をみくびっていましたよ」