『歩』〜人は愚か〜

少し、寝てしまったのだろうか
それとも、ぼーっとしすぎてただ記憶が飛んだのか分からない
ただ、背中の凍る言葉に私は現実に引きもどされた

兄の部屋から聞こえる電話の話し声




「やっと、アイツ死んだ」



ねぇーお兄ちゃんは誰と話しているの?
お兄ちゃんは、どれだけ母親を憎んでいたの?
お兄ちゃんはこれで自由を手に入れたの?
私はきっと自由なんて無い
早く、早く大人にならなくちゃ
自分ひとりで生きて行けるように


その後の記憶はしばらく無かった
おじさんが来てくれた事も気づかず
小さい姉ちゃんが来たことにも気づかず

ただ、葬儀に座らされていることすら
不思議でならない他人事のようだった


でも、私は見つけてしまったんだ

窓に外に居る、担任の先生を・・・・

そして、私は席を立った
そして、外に向かった
明日は・・・葬儀では・・・
絶対に泣かないから、先生私を泣かせて下さい