「ちょっとすみません・・ちょっと・・」



詩織と一緒にその人だかりをかき分けて、


中に入っていった。



すると、

拓人が夏目先輩を壁に押し付けて、

胸ぐらを掴んでいた。






「拓人!!」





私と詩織は、拓人と夏目先輩を引き離そうとした。



それでも、拓人の力が強すぎて、

二人がかりでも、引き離すことができなかった。





「お前!!なんでそんな噂流してんだよ!!」




拓人は、夏目先輩に怒鳴った。




夏目先輩は、ふっと笑った。



「俺が先に目をつけてたんだよ、お前の大事な花音ちゃんに。


莉子ちゃんもいいなって思っていたんだけど、


ふたりして全然俺を見ないから・・


ちょっと困らせてやろうって。

ほんとにちょっとだよ。

『すっげー遊んでいる女たちなんだぜ』って

ちょっと周りに言っただけだよ。






まあ莉子ちゃんは彼氏がいるから仕方ないとして、

花音ちゃん彼氏いないのに、全然こっち見ないから。


ちょっとイラっとしてね。


俺が目をつけた子は、だいたい落ちるんだけど。



俺を振るなんて・・・むかつくんだよこの女。


お前・・・何様なんだよって。




ムカついたから、もう花音ちゃんとやったってことにして、


女友達に話したら、あっという間に広がってさ・・」



拓人がもっと強く胸ぐらを掴み始めたから、

詩織と一緒に力いっぱい拓人を抑えた。





「うそだったって言えよ。


そんな噂話、お前が勝手についた嘘だったって。


ここでみんなの前で言え!!



そして、花音に謝れよ!!!」





夏目先輩は、へらへらと笑った。


「はいはい。


全部嘘でーす。




花音ちゃんごめんねー」






「夏目ってひでーな」

「夏目くんサイテー」

「最悪な男だな、夏目って」





そんな声が聞こえてきた。




「またこんなことしたら、ぶっ殺す」



拓人が勢い良く夏目先輩のワイシャツを離した。




「おいこらー!!何やってんだ!!

チャイム鳴ったぞ!!

教室入れよー!」




先生が来て、


生徒達が、さーっと散らばっていった。





夏目先輩は


「おーこわっ」


と、言いながら、教室へと戻っていった。





廊下に詩織と拓人と3人だけになった。