「1/4の奇跡」左側の君に【完】




また、勝手に涙が出てきた。


私は両手で、ガシガシと目を擦って涙を抑えた。




「苦しめるって誰が決めたの?


苦しいか苦しくないかは、

私が決めることでしょ?


拓人が決めることじゃないじゃん!



私は、拓人が一緒にいてくれない方が苦しい。

他の男なんて、そんなこと拓人が言わないで・・・」


声を押し殺して俯いて泣いた。


膝の上の革のバッグにポタポタと涙が落ちた。



私が泣いている間、

拓人はずっと黙っていた。


しばらく続いた沈黙を破ったのは

拓人だった。





「俺も初めてなんだよ・・・こんな気持ちは」





拓人の言葉に顔を上げた。


いつのまにかイルミネーションが点灯されていて、


少し眩しく感じた。




拓人が私の頬を優しく撫でてきたから、



私は拓人を見つめた。





「私の気持ちを受け止めてよ・・・」




その時、


頬を撫でていた拓人の手が、

マフラーの中に滑ってきて、



唇に触れるだけの




優しいキスをしてきた。






「拓人・・これってどういう意味・・・」





拓人は私のおでこに自分のおでこをくっつけた。





「言わせんなよ・・わかるだろ・・」







そう言ってもう一度、



ちょっと大人なキスをしてきた。