また、勝手に涙が出てきた。
私は両手で、ガシガシと目を擦って涙を抑えた。
「苦しめるって誰が決めたの?
苦しいか苦しくないかは、
私が決めることでしょ?
拓人が決めることじゃないじゃん!
私は、拓人が一緒にいてくれない方が苦しい。
他の男なんて、そんなこと拓人が言わないで・・・」
声を押し殺して俯いて泣いた。
膝の上の革のバッグにポタポタと涙が落ちた。
私が泣いている間、
拓人はずっと黙っていた。
しばらく続いた沈黙を破ったのは
拓人だった。
「俺も初めてなんだよ・・・こんな気持ちは」
拓人の言葉に顔を上げた。
いつのまにかイルミネーションが点灯されていて、
少し眩しく感じた。
拓人が私の頬を優しく撫でてきたから、
私は拓人を見つめた。
「私の気持ちを受け止めてよ・・・」
その時、
頬を撫でていた拓人の手が、
マフラーの中に滑ってきて、
唇に触れるだけの
優しいキスをしてきた。
「拓人・・これってどういう意味・・・」
拓人は私のおでこに自分のおでこをくっつけた。
「言わせんなよ・・わかるだろ・・」
そう言ってもう一度、
ちょっと大人なキスをしてきた。



