始まるまで、恥ずかしいから


マントの外に出ていた。



ふっと拓人が私の頬を触った。



思わず拓人を見上げると、

拓人は心配そうに私を見ていた。



「ちゃんと見えてんのか?」



拓人は私の右目の包帯を直してくれた。




両手で顔を撫でられているみたいで、


恥ずかしくなった。




「ありがと・・」





いつもよりもぐっと大人っぽくみえる拓人。



素敵だな・・



「はじまるよ・・・」




隣のスペースでスタンバッていた狼男が、


ヒソヒソ声でおしえてくれた。




すると、ぎゅっと拓人にうしろから抱きしめられた。



そして、目の前にマントがかぶせられた。





なんか・幸せかも・・やってよかった・・・




後ろから抱きしめられながらそう思った。





入口のほうから、キャーキャー叫ぶ声がしてきた。


だんだん近づく話し声や叫び声。


「わっ‼びびったー!


ドラキュラ・・・っすかね・・・」


「ていうか、まんま和泉先輩じゃ・・・」



私はマントからゆっくりと出た。



「いやああああああ!!!!!!!」
「うわああああああ!!!!!!!」



ものすっごい声を出して驚かれて、


こっちもびっくりしてしまった。




追いかけようと思ったんだけど、

一気に走り抜けて出口まで行ってしまったから、



また、拓人の元に戻った。





カップルの客には、いいみたいだった。


彼女の方が、ぎゅっと彼氏にしがみついている。




そうやって、何組も驚かせては、


拓人の元に戻っていた。



そして何組目かの時、



「怖いね~夏目くん・・」



・・・夏目・・



夏目先輩が来た。