「とりあえず一回デートしてみる?」


夏目先輩が顔を覗き込んできた。




「しないです。


私、好きになった人としか、デートとか無理なんで」


私は夏目先輩を少しにらんで、そうはっきり言った。



「じゃあ、俺のこと好きになってみる?」



ますます顔を近づけてきた。



私は、夏目先輩から顔を背けた。



「きっと好きになるよ。俺のこと」




夏目先輩は耳元でそう囁いて、

私の肩をポンポンと軽く叩き、その場を立ち去った。


ふと、視線を感じて周りをみると、

女子たちが、白い目で見ていた。


・・・だから変な噂が流れるんだよ。




「花音大丈夫?


夏目先輩・・なんだって?」



莉子がやっときて、私の前に座った。


「・・・大丈夫、なんでもないって。



早く食べよ」



私はお弁当の蓋を開けた。