「お父さん、車の鍵貸してくれる?」
天文台にいたお父さんに声をかけた。
「車?何に使うんだい?」
お父さんはポケットから鍵を出して、
私に差し出した。
「昨日の遠足の子が水筒を忘れていっちゃって。
今から学校に届けに行くの」
私は鍵を受け取った。
「そうか。大丈夫か?
お父さんが代わりに行ってもいいぞ?」
「大丈夫だよ。渡したらすぐに帰ってくるから」
「そうか。気をつけて。しっかり帰ってくるんだぞ」
「しっかり?あははっ・・うん。わかった」
私は駐車場に向かった。
ナビで学校の住所を検索すると、
ここから30分ほどの市のはずれにあった。
のどかな田舎道を走って、30分。
拓人のいる学校に着いた。
【来校者はこちら】という看板のある駐車場に車を停め、
どこが玄関なのかわからずウロウロとしてしまった。
かなり広くて、いくつも校舎が並び、
高校生ぐらいの制服を着ている子たちも歩いていて、
小学校だけじゃないんだ・・・と思った。
トントンと、肩を叩かれ振り向くと、
拓人の彼女がニコニコ笑って立っていた。