笑顔で話しかけてきた拓人
笑うと少し幼くなるのは、
昔と変わらない・・・
「元気だよ。
こんなところで会えるなんて・・びっくりした」
「そうだな」
広場では、みんなお菓子を食べたり、
走って遊んだりしていた。
「拓人は?耳の調子は大丈夫?」
「左耳は、聞こえているよ」
「そっか・・・・よかった。
先生にもなって・・・本当によかった」
拓人は、私の首から下げている名札を掴んだ。
「研究員、葉月花音・・・
葉月ってことは、結婚してないのか?」
拓人は、名札を戻した。
「結婚なんて・・・
私は、仕事に生きるって決めたの。
人を好きになるって、私には簡単なことじゃなくて・・・
だから、私は結婚はしない。仕事一筋」
私は、ちょっと大げさに笑った。
「そんなこと言うなよ。
それじゃ・・・意味ないだろ。
お父さんも、早く孫の顔とか見たいだろうし」
私は首を振った。
「お父さんも諦めているから大丈夫。
私はね・・・拓人。
拓人を今でも好きなんだ。
あ・・・勘違いしないでよ?
やり直したいとかそういうことじゃなくて。
拓人と別れてから、
拓人のことを忘れよう忘れようと思った。
でもできなかった。
じゃあ、嫌いになろうって嫌いなところを一生懸命探した。
でも、ないんだ。
嫌いになんかなれない。
どうしたって好きなものは好き。
もう、忘れることもできないし、嫌いにもなれない。
じゃ、もう好きでいようって思った。
そう、思ったらすごく楽になった。
私が星を好きなのと同じ。
好きなものは好きなんだ。
また付き合いたいとか見返りなんか期待してない。
私は、勝手にずっとこれからも拓人を好きでいる」



