3年1学期の終業式を暑い体育館で終え、



教室に戻って、自分の席でパタパタと下敷きで仰いでいたら、


詩織が前の席に座ってきた。






「夏休み、和泉とどっか行くの?」





詩織は私から下敷きを奪って、


私と二人分の風を出す勢いで仰いでくれた。





「う~ん・・・特にはないかな・・・



でも、家に来る?って言われてる」





「初めて?和泉の家」





「・・・うん。初めてだけど。。」





詩織は「ちょっと待ってて」と自分の席に戻って、



またすぐこっちに来た。





「これ、一個渡しとく」





・・・・?



「何・・・これ・・・」




「え?ゴム」






・・・・・・?????





「ごっごっ・・・・」




「こらっ!」と下敷きで頭をバシっと叩かれた。





「夏休みだし、初の部屋だし。



和泉は絶対に・・考えているよ・・うん。




和泉だって、普通の男子高校生なんだから。



ちゃんと、これ、付けてもらいなさいよ!



はい、しまって!」







私は手の中にあるゴムを、



ごそごそとポーチにしまった。





「やっぱ・・


拓人はそんなことたぶん考えてないと思うな・・」






「なんで?」




「だって、受験勉強一緒にしようかって言ってたから・・・」





詩織は下敷きをバンバン叩いて笑った。




「そんなの口実だって。




でもさ・・・本当に勉強だけだったら、



なんか・・・さみしくない?


魅力ないのかな・・とか思っちゃわない?」





魅力・・・ない・・・・






なるほど。確かにそうかもしれない・・・