「1/4の奇跡」左側の君に【完】





廊下から教室の中を見ると、


何人かの生徒たちが、

文化祭でやるお化け屋敷の準備をしていた。


ひとりの女子が張り切って仕切っていて、


みんなノリがいい感じで、


みんな笑っていて・・・



・・・私こういうの苦手なんだよな。



輪になんて、入れない・・・





私は、そのまま階段を下りて、

学食と体育館に続く渡り廊下に出た。





すると、体育館から、昼間の音よりも、

ダンダンダンという大きな音と、


大きな掛け声がしてきた。





体育館の入口の扉には、5人ぐらいの制服の女子が


中を覗いていた。



もう一度バスケしている和泉が見たかったんだけど、

この女子たちをかき分けて

中をのぞく勇気がなかった。





やっぱいいや・・・





私が引き返そうとした時、



わああーー!という女子たちの声がした。



私が振り返ると、


和泉が体育館から出てきて、

私の前に立った。




「どうした?なんかあったか?」




バスケの練習着だろうか・・



黒いTシャツにダボっとしたハーフパンツ。



背の高い和泉が目の前に立っていて、


見上げると、



ふわふわっとした髪の毛先が、

汗で濡れているのが見えた。


少し息を切らした和泉は、

不機嫌そうな顔ではなくて、


とても優しい表情をしていた。


和泉の瞳が綺麗すぎて、

なんだか目を合わせていられなくなってしまって、

下をむいた。



「いや、別に・・・」



「5時まで待つのきついよな、今あがるから・・」

「違う・・・」


和泉が体育館に戻ろうとしたから、


私は、和泉のTシャツの裾をつかんで止めた。

和泉は不思議そうに振り返った。





「見たかったの・・その・・・



和泉がバスケしているとこ。


見たかっただけ・・」