拓人は、自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「ばーか。お前の前で泣くかよ。
お前と一緒にすんな。
飲み終わったか?ほら・・・行くぞ」
拓人は、私の空になったカップと自分のカップを持って、
ゴミ箱へと歩いて行ってしまった。
私も追いかけて、拓人の手を繋いだ。
「手、冷てーな・・」
そうつぶいて、ぎゅっと握ってくれた。
拓人の手は大きくて厚みがあって、
温かい・・・
隣から覗き込んだ拓人の横顔は、
やっぱり切なそうで、
ちょっとうつむきがちに歩いているせいか、
悲しそうな瞳を前髪が少し隠していた。
ショッピングモールを出て、駅へ向かった。
やっぱり拓人の様子が気になって、
私は、手を引っ張って立ち止まった。
「なんか・・あった?」
拓人は振り向いて笑った。
「なんだよ、なんもねーって」
手をぐっと引っ張り返されて、拓人の隣に行って
また歩き出した。
「なんかあったら言ってね・・」
ぽつりとつぶやいた私の言葉に、
拓人は何も答えなかった。



