「ごめん、寒かったよな・・」
そう言いながら私の隣にドカっと座ってきた。
「全然。大丈夫だよ。
お父さんと・・なんかあった?」
「うん・・あっ。」
拓人が建物の方を向いて驚いた。
私もそっちに目をやると、
通路からお父さんがこっちを見ていた。
お父さんはぐっと窓ガラスに顔を近づけて、
そして、天文台の方へと歩いていってしまった。
「お父さんに見られた。。。
触るなとか手をつなぐなとか・・うるさくてほんとごめんね」
「そんなことないよ」
拓人は、ジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、
ベンチの背にもたれた。
「お父さんは花音が大切なんだよ」
拓人はそのまま空を眺めていた。
「・・・星だ・・」
いつのまにか日が落ちて、
赤みを帯びていた空から藍色の空へ。
拓人は体を起こし、ポケットから小さな箱を出した。
「これ」



