「1/4の奇跡」左側の君に【完】





科学館を見ていたら、

閉館を知らせる音楽が流れ出した。




もう5時なの・・?



お父さんの話が長すぎて、

科学館を少ししか見ることができなかった。



私はもう何度も科学館にきているから、


見飽きているけど、

拓人は初めてだったから、


ひとつひとつ興味深く眺めていた。





「拓人、もう閉館の時間だって」





拓人は子供みたいに、

ボタンを押してみたり、レンズを覗いてみたり、


隕石のレプリカを持ち上げてみたりしていた。




「おもしろい・・?」




拓人の顔を覗き込むと、



「ここってずげーな」って笑った。




「もう、閉まっちゃうから急ご?」



私がそう言うと、拓人はちょっと残念そうに、


足早に先を進んで、出口からでた。





1階に降りて、また、受付にいた真壁さんに挨拶をした。







「楽しめたかい?」




真壁さんは、拓人に言った。



「いや・・・」



拓人は俯いてしまった。



真壁さんは不思議そうに首を傾げた。




「どうした?」




拓人は顔を上げた。



「時間が全然足りないです」




真壁さんは拓人のその言葉に吹き出して大笑いした。




「あはははっ!そうか!



じゃあ・・今度はもっと早い時間からおいで。




葉月さんと待っているよ」





「はい」




拓人は真壁さんに頭を下げて、



科学館から外へ出た。







「拓人ってこういう科学館とか好きだったの?」




バス停に向かうために、


広場を歩き出した。



「初めて来たよ、


おもしろいところなんだな」





初めてだったんだ・・・





「あ、ちょっと・・




あそこのベンチで座って待ってろ」




拓人は広場にあるベンチを指差して、


また科学館の方へと走って戻ってしまった。