科学館を見ていたら、
閉館を知らせる音楽が流れ出した。
もう5時なの・・?
お父さんの話が長すぎて、
科学館を少ししか見ることができなかった。
私はもう何度も科学館にきているから、
見飽きているけど、
拓人は初めてだったから、
ひとつひとつ興味深く眺めていた。
「拓人、もう閉館の時間だって」
拓人は子供みたいに、
ボタンを押してみたり、レンズを覗いてみたり、
隕石のレプリカを持ち上げてみたりしていた。
「おもしろい・・?」
拓人の顔を覗き込むと、
「ここってずげーな」って笑った。
「もう、閉まっちゃうから急ご?」
私がそう言うと、拓人はちょっと残念そうに、
足早に先を進んで、出口からでた。
1階に降りて、また、受付にいた真壁さんに挨拶をした。
「楽しめたかい?」
真壁さんは、拓人に言った。
「いや・・・」
拓人は俯いてしまった。
真壁さんは不思議そうに首を傾げた。
「どうした?」
拓人は顔を上げた。
「時間が全然足りないです」
真壁さんは拓人のその言葉に吹き出して大笑いした。
「あはははっ!そうか!
じゃあ・・今度はもっと早い時間からおいで。
葉月さんと待っているよ」
「はい」
拓人は真壁さんに頭を下げて、
科学館から外へ出た。
「拓人ってこういう科学館とか好きだったの?」
バス停に向かうために、
広場を歩き出した。
「初めて来たよ、
おもしろいところなんだな」
初めてだったんだ・・・
「あ、ちょっと・・
あそこのベンチで座って待ってろ」
拓人は広場にあるベンチを指差して、
また科学館の方へと走って戻ってしまった。



