お父さんはぷいっと、
また子供の方を向いてしまった。
拓人はじっとお父さんの背中を見つめていた。
「ごめん拓人・・お父さんは放っておこ。
科学館の方に行こうか・・」
拓人は、ちょっと考えてから望遠鏡の方へ歩き出した。
「俺らも並ぼう」
振り返ってそう言った。
「え・・並ぶの?」
拓人はそのまま子供たちの後ろに並んだ。
しかたなく私もその後ろにならんで、
レンズを覗く順番を待った。
拓人の前には、子供が3人いて、
そのひとりがレンズを覗いていた。
天文台には、あと、母親らしき人が、
壁に掲げてある天体写真を眺めていた。
「すっげー」とお喜びしている子供たちを、
拓人は優しい眼差しで見つめていた。
お父さんはというと、
ちらちらこっちを見ながらも、
ちゃんと子供たちには、説明をしてあげていた。
3人の子供たちは見終わると、
母親の元へかけていってしまい、
望遠鏡のところには、
拓人とお父さん、そして私の3人となった。
一気に重たい空気に・・・
口をへの字に曲げて眉間にシワを寄せて、
私に目で何かを訴えているお父さん。
そのお父さんに拓人は1歩近づいた。
「和泉拓人と言います。
花音さんとお付き合いさせてもらってます。
よろしくお願いします」



