「追いかけなくて良いのか?
沙羅、走って行っちまったぞ。」
「あぁ…そうなんですけどね。」
「何だ?俺に何か用か?」
相変わらずだよなぁ…弥生君は。
「沙羅さんはダメですけど…
もし次に好きな人出来たら、もう少し素直になった方が良いですよ。」
転校する1日前。
俺を屋上なんかへ呼び出して“沙羅を宜しく”なんて頼むくらいなら。
「今日だってあんな嘘吐きに来たわけじゃないんでしょう?
――わざわざ海外から来たぐらいなんですから。」
弥生君は親の仕事の都合で海外生活をする事になっていた。
だから、沙羅さんにあんな言葉を伝えにきただけのはずがない。


