「逃げるなよ。」 低く、胸に響くような声。 私は咄嗟に弥生に抱きしめられ 耳元で諭されていた。 「――俺も逃げねーから。」 一層私を強く抱きしめる弥生に私は身動きが全く取れなかった。 動く気にもなれなかった。 時は一年前の春に遡る。