大変な一夜が明けて、寝室のドアを開けたのは昼近い時間だった。
そういえば母親に業務報告もせずに、おまけに昨夜は無断外泊だった事を思い出した。
連絡を入れるために慌てて携帯を開いたら、一件のメールが届いていた。
送信元は母親。
件名は「祝!玉の輿」の文字にくす玉が盛大に割れた絵文字で〆られていた。
『アンタには勿体無いくらいだわね。
私があと30歳若かったらと思うと悔しいわ。
前回の轍を踏まないようにせいぜい頑張りなさい。
平成のシンデレラさん、健闘を祈る!』
祝福を祈る、ではないところに母の想いが感じられる。
めでたしめでたしで終わる物語とは現実はまるで違う。
幸せに暮らして行く為には良いことが続いていく努力と
辛い事を乗り越える忍耐が必要だ。
この王子様と歩く道は平坦な道ばかりではなさそうだから
それ相応の覚悟も必要だ・・・と言う事が言いたかったのでしょう?お母さん。
「ま、せいぜい頑張れよ」
背中から私を抱きしめて、私の手元の携帯を覗き込んだ優登が
楽しそうに耳元に囁いた。
「頑張るのは私だけなの?」
「貴方は?」と首を捻って軽く唇を合わせると
「俺か?」と答える優登の唇が私のこめかみに優しく触れて
抱きしめる力が強くなった。
「俺は頑張るお前を・・・こうやって守ってやる」
王子様に守られながら頑張る年上のお姫様が平成のシンデレラ、か。
わが母親ながら上手い事を言ったものだ。
「守るだけ?」
「足りないか?」
「愛してくれないの?」
「まだ足りないのか?」
こんなに愛しているのに、と雰囲気たっぷりに囁いた優登の唇が
私のそれに重なった。
めでたし めでたし・・・と言いたいところだけれど
私たちは終わらない。
二人の物語はここからが始まりでこれからも続いていくのだから。
end.

